「マスクする、マスクする」と何度も自分に言い聞かせるように繰り返す姿がありました。
一年前は、コロナ禍だったためマスクが必要な時期があり、その時はマスクをしてもそれを噛んでしまい、すぐに穴が開いてしまっていました。しかし、その後だんだんとマスクを噛まなくなり、穴を開けることのがなくなり、しっかり着用することができるようになりました。
コロナの対応が第5類に移行したため、マスクをしなくても良い状況となりました。しかし、アレルギーの症状がある方数人はマスクを必要とする時期があります。
それを見て、きっと彼の心の中では、何かがせめぎ合っていたのだと思います。
アレルギーの症状は見られず、マスクの必要はない——そんな説明を何度伝えても、納得することは簡単ではありませんでした。自分の服の袖を噛んでしまったり、飛び跳ねたり。周囲の声かけが届かず、苛立ちが表に出ることもありました。
それでも私たちは、何度でも、静かに、丁寧に、彼の心に寄り添うように「大丈夫だよ」と伝え続けました。
対話の大切さ
わかってほしい。でも、すぐには難しい。
「わかろうとしてくれる人がいる」と感じられたとき、初めてその人の心は、ほんの少し動き出します。支援ではなく、対話でした。
一枚のマスクをめぐる小さなやり取りの中に、「安心できる場所」とは何かを、改めて考えさせられました。
どんな行動の奥にも、理由がある。
私たちはその一つひとつに耳を傾け、丁寧に寄り添う支援をしています。