「仕事の基礎・社会人としての基礎」を身につける
9:00 | 基礎作業開始 |
10:30 | 15分休憩(トイレ・ストレッチ |
10:45 | 作業再開 |
12:00 | 昼食(食堂に移動して食べます) |
13:00 | 分担掃除 |
14:30 | 入浴 |
16:00 | 洗濯 |
18:00 | 夕食 |
一年クラスで走り拭きの目標を達成し、一人で活動に取り組めるようになると基礎クラスに進級します。将来仕事に従事するために必要な職場でのルールや、仕事に向き合う態度を重点的に学びます。午前中は作業を行い、午後はトイレや居室、階段など自分が担当する場所を最後まで一人で清掃する分担清掃を学びます。
簡単な箱折作業を学びながら職場のルールを身につけます。作業そのものは、紙器加工の初歩的な部分を担いながら、指先の使い方や力の入れ具合などを習得します。そして紙器工場という実践の場を活用し、職場のルールや仕事の進め方の基本を身に付ける事が大きな狙いです。
任された仕事を自分の力で最後までやり遂げる力や、名前を呼ばれた時の元気な返事、職場での明るい挨拶、そして業務の報告をその都度正しく行う事を学びます。職場の仲間と楽しく仕事を進めるためには必須のスキルであり、将来就労にするに当たって重要視されるポイントです。特に失敗してしまった際に周囲に助けを求める力や、正しく報告できる力を身に付けるには、基礎クラスから繰り返し学び続ける必要があります。また元気な挨拶や返事は、同僚たちと仲良く働くために、とても重要な要素になります。
一年クラスでの単純な往復の走り拭きとは異なり、自分が担当するトイレや脱衣所、居室などの一つの場所を清掃する事はとても難しい事です。部屋の形はそれぞれ異なり、気にかけなければいけない箇所も場所によって全く違う為、掃除の難易度は一気に高くなりますが、それぞれの習熟度を見極めながら丁寧に指導しています。
分担清掃の学び始めは「食堂」です。一年クラスで走り拭きを中心に清掃を行ってきた園生にとって、最も作業内容が近く、部屋の形状も単純で理解しやすいからです。園では掃除機を使わず、箒を使ってチリや埃を集めてから走り拭きで床を綺麗にします。単純に埃を吸い上げる便利な掃除機とは異なり、箒を使うことでゴミを認識し、埃の種類や場所を意識し、加減をしながら掃除用具を使いこなす術を学べます。
食堂以外の分担清掃として、窓・階段・居室・脱衣所・浴室・トイレなどがあり、その難易度や清掃のポイントはそれぞれ異なります。担当の職員は食堂清掃の様子や習熟度を見極め、それぞれの園生に適した場所を次のステップとして担当させます。その園生にとって、少し頑張ればスキルアップに繋がる場所はどこなのか?常に適性を見極めながら指導します。その為、園生達は作業中に「〜が終わりました。見て下さい。」と必ず報告するように指示をします。「できているね。」節目の声掛けは、最後まで彼らがやり遂げるための橋渡しでもあります。
食堂掃除から始まった分担清掃で、窓・階段・居室・などが一人で清掃できるようになった園生は、最も難しいトイレと浴室の清掃へとステップアップします。他の場所と違い洗浄液や道具を使う事も多く、作業工程も複雑です。その為、教える側も園生も苦労しますが、毎日繰り返す事で確実にその術を身につけていきます。
分担清掃に於ける最難関は浴室とトイレです。園のトイレは、日頃からマナーを守った使い方をしているため、酷い汚れ方はしていないものの、やはり清掃するにはそれなりの苦労が伴います。また浴室は水を常に使う場所である為、カビなどが発生しないように気を配る必要があります。園では清掃の手順だけでなく、汚れ具合を確認する場所、掃除用具の使い方などを徹底して教えています。
掃除は自分たちが生活している場所を常に清潔にし、整理整頓をして住みやすくする心地良さを育て、それに必要な技能や知識をも身につけられる学びの多いトレーニングとも言えます。また結果が本人にもはっきりと出るため、評価も分かり易く、やり遂げた喜びも感じ、体を動かす事に前向きになり、働く事の大切さを自然と身につけることができます。そして繰り返す事で、正しい掃除の方法や身綺麗にする習慣も身についてきます。そして掃除の動作である雑巾を絞る、濯ぐ、拭くといった動作は体全体の機能訓練にもなり、その効果は絶大です。家庭生活においても、自分が行った掃除で家族の役に立てるといった自覚を持つことができ、自信を持って生活できるようになっていきます。
基礎クラスの目標は「仕事と暮らしの基礎を身に付ける」事です。午前中は紙器工場での簡単な箱折り作業を学びながら、職場でのルールや挨拶の仕方を身に付けます。午後は分担清掃でその担当する場所を最後まで一人で貫徹する術を身に付けながら、日常生活・社会生活を支える基礎となる清掃を学びます。障害のある彼らが、地域の方々や職場の同僚達など、周囲から可愛がられ、気に留めてもらえる存在であり続ける為にも、気持ちの良い挨拶が交わせる事、身辺自立ができ、身の回りの清掃方法を学び、清潔な暮らしを自分の力でできることは、とても大切な要素となります。そしてここで身に付けたスキルは、生涯に渡って、彼ら自身を守る盾になるはずです。また入園時、数多くの問題を抱え、家族にとって悩みの種だった彼らが、大きく成長を遂げ、頼もしい存在へと変化した瞬間でもあります。